2021年 叡空原稿

京都大学空手道部

 今年はなかなかネタが思いつかなかった阿部洋太郎です、おこんばんわー。さて、今年も締切りギリギリになってOB会誌の原稿を完成させることができました。折角書いたのでブログでも公開します。

「基本が大事」と言う前に、前提を合わせる必要があるかもしれない。

 数年前から新入生を指導する時に「基本練習の指導はこういう形でする」という指導マニュアルを指導部と幹部で作っているが、指導マニュアルの内容が『基本』だという勘違いが生じている気がする。マニュアルで決めている「足幅の前後は三足長半で、横幅は肩幅くらい。膝は曲げて、腰の角度は45°にして、・・・」というのはスタートラインでしかない。本来はそこから「もっと速く突くにはどうしたらいいか」「もっと強く突くにはどうしたらいいか」を考え実際に試してみてより速くより強い技を作っていく、という工程に入る。「足幅を1cm広げたらどうなるか」「1cm狭めたらどうなるか」「横幅を肩幅より少し広げたらどうなるか」「少し狭めたらどうなるか」「今の構えより膝を深く曲げたらどうか」「伸ばしたらどうなるか」「腰の角度を44°にしたらどうなるか」「46°にしたらどうなるか」・・・と体の使い方を試していき、1本前の技よりも強くて速い突きを目指す。1本前の突きよりも強くて速い突きができたら、更に強く更に速く突くにはどうしたらいいかを考える。そうやって技を高めていく作業が『基本』であると私は認識している。

前提が違うと「基本が大事」の意味も変わる。

 「足幅の前後は三足長半で、横幅は肩幅くらい。膝は曲げて、腰の角度は45°にして、・・・」というのが「基本」だと思い込んでいたら、「基本が大事」と言われてもピンと来ないと思う。その程度であれば半年くらいやれば充分だし、できたところで試合に勝てるようにはならない。では、「基本が大事」というのが『「もっと速く突くにはどうしたらいいか」「もっと強く突くにはどうしたらいいか」と考え実際に試してみてより速く強い技を作っていくという工程が大事だ』という意味だと認識したら伝わるかというと、まだ前提が合っていないかもしれない。

複数のことを同時にやると効率が落ちるから、段階を踏んで1個ずつ習得する。

 動いている相手に対してポイントになる技を当てるにはどうしたらいいか。最初から動いている相手に当てる練習をすると、「相手の動きを予測する」「技が届く位置に移動する」「ポイントになる技を出す」という複数の課題に同時に取り組むことになる。そうやっていきなり「本番」に近い練習をするよりも、段階を踏んで1個ずつ習得していく方が早い、という仮説に基づいて京大の練習メニューは組まれている。

①まずその場で強くて速い技を作る。
②移動しながら技を出せるようにする。
③止まっている相手に当てれるようにする。
④動いている相手に対して当てれるようにする。

 上記の考え方(①から順番に習得していく)に基づいて練習していくなら、大元となる①の「基本」が大事になる。

「基本が大事」かどうかも、認識を合わせる必要がある。

 強くなる方法は1つではない。毎日2時間組手した方が強くなるかもしれないし、筋トレ+カロリー過剰摂取で体を大きくすることに注力した方が効率はいいかもしれない。その場基本がいるかどうかも議論の余地はあると思う(移動基本からでもよいかもしれない)。過去に「基本」を重視して成果を出しているのは事実であるが、近年同じようにやっているつもりで成果が出ていないという事実もある。この2年はコロナ禍の影響で練習に参加できる機会が少なかったが来年はもう少し増えると思うので、“前提”が合っているか確認しながら「どうしたら強くなるか」を指導部と幹部で考え議論できればと思う。

「望んでいること」「現状」「やり方」の3つが明確になると、不安は小さくなる。
 そして、「質問に答える」だけで「望んでいること」「現状」「やり方」の3つは明確にできます。
京都大学空手道部
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