NLP(神経言語プログラミング)とは何か?

出来事→意味付け→感情→行動

 身の回りで起きた出来事に対し、人間は過去の経験に基づいて「意味付け」をする。その「意味付け」によって「感情」が生じ、「感情」によってどういう「行動」をするのかが決まる。

 例えば誰かが自分の方を向いていることに気付いた時。過去の経験に基づいて「にらまれた」という「意味付け」をすると、不安や恐怖心・警戒心が湧く。そうするとその場から離れるとか「にらみ返す」といった自分の身を守るための行動になる。一方で「見つめられた」という「意味付け」をすると、幸せや「嬉しい」という感情が湧く。そうすると相手に近づく・ニッコリ笑う・「見つめ返す」という行動になる。

 無意識に行う「出来事→意味付け→感情→行動」という流れをプログラミングと呼ぶ。そして、この仕組みを理解し「意味付け」を変えることで感情や行動を変える(プログラムを変える)ノウハウを集めたものがNLP(神経言語プログラミング)である。

注意1:無意識の「意味付け」には肯定的な意図がある。

 世の中には膨大な情報がある。ひとつひとつの情報に対して「この情報にはどういう意味があるのか」と考えていくと時間がなくなる。だから人間は過去の経験に基づいて処理できる情報は「プログラミング=過去にうまくいった方法」で処理し、過去に経験したことがない情報に対してだけ頭を使うようにできている。

 身の回りの多くの物事は「過去にうまくいった方法」と同じ方法を取るとうまくいく。しかし、中には過去に経験した時と状況が変わっており「過去にうまくいった方法」ではうまくいかなくなることもある。例えば、過去に「“にらまれた”からその場から逃げ出して自分の身を守ることができた」という経験があって、こちらを見ている人がいたら無意識に「にらまれた」と意味付けし恐怖感を感じ「逃げる」という行動を取っていたとする。そうすると、逃げなくてもいい人から逃げ回っているうちに様々なチャンスを逃してしまう、というように自分が取っている行動が自分の望んでいることの役に立たなくなる場合もある。また、仲良くなりたい人と一緒にいるのに自分の方を見ていると無意識に「にらまれた」と意味付けし恐怖心が沸き距離を取ってしまう、というように意識(自分が考えていること)と無意識にやろうとしていることが異なっていて葛藤し苦しむ、ということもあるかもしれない。このように、過去に経験した時と状況が変わっていて「にらまれた」と意味付けすることが自分にとって最適の選択ではなくなっていることは起こり得る。そんな時は「意味付け」を変えると感情や行動が変わる可能性がある。「意味付け」を変える時は、次の①~③の順に整理していく。

① 自分が「どういった出来事に対してどういう意味付けをし、どんな感情になってどういう行動をしているのか」を紙に書きだす。紙に書きだすと、自分が無意識にどのように考え、どういう行動を取っているのかに気づくことができる。自分のことを客観的に見ることができると冷静になり、解決の糸口も見つかりやすくなる。

②その意味付けをしたことで、自分に対してどんなよいことがあったのかを確認する。「その意味付けをすることでよいことがあった」という経験をすると、次に同じような出来事があった時に無意識に同じ意味付けをする。その元となる経験が何かがわかると、今自分が望んでいることに対して今もその意味付けをする必要があるのか、その意味付けを変えてしまっていいのかを判断できる。

③その出来事に対して「自分がどういう感情を持ちたいのか、どういう行動をしたいのか」を紙に書きだす。望んでいることがわかると、どうやったら望んでいることを実現できるのかも見えてくる。

 フレームワークを使うと、より簡単に「意味付け」を変えることができる。フレームワークについては後述する。

注意2:意味付けを変えたら必ずうまくいく、とは限らない。

 ある出来事に対して、意味付けを変えても感情が変わらないことはあり得るし、感情が変わっても行動が変わらないこともあり得る。また、感情と行動が変わっても望んでいることを実現できない可能性も当然ある。

 例えば誰かが自分の方を見ている時。「にらまれた」という意味付けを「見つめられた」に変えたら何で見つめられているかがわからなくて恐怖心が沸いてきた、となる可能性はある。また、「見つめられた」という意味付けをしたら嬉しくなって訳がわからなくなって気が付いたら逃げていた、という可能性もある。「見つめられた」という意味付けをしたら嬉しくなって近づいて話しかけることができたが相手に無視されて仲良くなれなかった、という可能性も当然ある。

 そういうことがあると「できない」「やっても変わらない」という意味付けをしてしまいがちだが、「現状を変えたい」という気持ちがあるのに「やっても変わらない」という意味付けを無意識にしてしまうと葛藤が生じ思い悩んで自分を傷つけてしまう。

 今、自分が望んでいるように生きているか。違うのであれば、①自分が「どういった出来事に対してどういう意味付けをし、どんな感情になってどういう行動をしているのか」を紙に書きだす ②その出来事に対して「自分がどういう感情を持ちたいのか、どういう行動をしたいのか」を紙に書きだす ③その意味付けをしたことで、自分に対してどんなよいことがあったのかを確認する。

うまくいったらOK、うまくいかなかったら変える。

 うまくいかないやり方を100回やるよりも、100通りのやり方を試した方がうまくいく可能性は高くなる。自分が望んでいることを実現できるまで「やり方」を変えていくと、いつかは望んでいることを実現できる。

注意3:「変えることは良いこと」とは限らない。

 「変えることは良いこと」という意味付けをしてしまうと、うまくいっていることまで変えてしまってうまくいかなくなることもあり得る。うまくいっていることは変える必要がない。うまくいっていないことは変える。「自分が望んでいること」に意識を向けると、変える必要があるかどうかは判断できる。

 ここまで、NLPについて自分が理解した内容をまとめた。以降は「どうやって使うのか」という点について書いていく。

NLPの使い方1:自分に対して使う。

出来事→意味付け→感情→行動

 自分が望んでいることに対して「プログラミング= 過去にうまくいった方法 」が役に立っていない場合は、①自分が「どういった出来事に対してどういう意味付けをし、どんな感情になってどういう行動をしているのか」を紙に書きだす ②その意味付けをしたことで、自分に対してどんなよいことがあったのかを確認する ③その出来事に対して「自分がどういう感情を持ちたいのか、どういう行動をしたいのか」を紙に書きだす の順で思考を整理していくと「意味付け」を変えることができ、感情や行動を変えることができる。(1回でうまくいくとは限らないが、繰り返していくとうまくいく可能性は高くなる)

 考えがまとまらない時は、フレームワークを使うと質問に答えていくだけで思考を整理できる。フレームワークは「人間は質問されると無意識に答えを探す」という性質を利用して頭の中を整理できるように設計された質問集。例えば、アウトカム設定:望んでいることを具体的に落とし込んでいって行動に繋げるワーク、葛藤の統合:「やりたいのにできない」「やめたいのにやってしまう」という葛藤の元にある”肯定的な意図”を見つけ出すワーク、メタモデル:5つの質問をすることで”思い込み”を外していくワーク などがある。

 大事なのは、自分が今どういう状態になっているのかに気づくことと、何を望んでいるのかを見つけること。「望んでいること」と「現状」がわかると、「やり方」も見つかりやすくなる。「やり方」が思い浮かんだらやってみて、うまくいったらOK、うまくいかなかったら変える。自分が望んでいることを実現できるまで「やり方」を変えていくと、いつかは望んでいることを実現できる。

NLPの使い方2:相手に対して使う。

出来事→意味付け→感情→行動

 誰かとコミュニケーションを取ろうとしている時にも「相手がどういう出来事に対してどういう意味付けをし、どんな感情が沸き起こってどういう行動を取っているか」を推測することは役に立つ。ただし、自分に対して「出来事→意味付け→感情→行動」を解き明かしていく時と違って以下の3点が必要になる。

・相手の「行動」を観察する。
・相手がどういうことを考えているのかを聞く。
・相手に自分が考えていることを伝える。

注意1.行動を観察する時は「自分が無意識に意味付けしている」ことを意識する。

 例えば相手が「泣いている」という行動をしている時、私たちは「悲しいことがあったのだろう」とか「たぶんアレが原因かな」とか、その行動に対してほとんど無意識に意味付けをする。意味付けすること自体は問題ではないが、意味付けが間違っていた(例.目にゴミが入っただけだった等)ことに気付かずにいると誤解やミスコミュニケーションが生じる可能性がある。

 大事なのは「自分の意味付けが間違っている可能性がある」と知っておくこと。そうすると誤解やミスコミュニケーションを減らすことができるし、必要なら「どうしたの?」「何があったの?」と相手に聞いてみて自分の意味付けが合っていたかどうかを確認できる。

注意2.「地図の違い」があることを知っておく。

 例えば「アホ」と「バカ」。関西人は「アホ」には肯定的な感覚を持っていて日常的に使うが「バカ」には拒絶反応を示す。関東人は「アホ」と言われる機会が少なく言われるとショックを受ける。好きな人に「バカ」と言われたいと望んでいる人もいれば、コンプレックスがあって「アホ」「バカ」と言われた瞬間に激怒してしまう人もいる。このように、同じ言葉であっても、人によって「意味付け」の仕方は違う。言葉だけでなく、「にらまれた」と取るか「見つめられた」と取るかなど、行動・態度に対しても 「意味付け」の仕方は変わる。「自分と同じ」と考えてコミュニケーションを取ると、自分の意図と異なる受け取られ方をして失敗する可能性がある。

 最初から「持っている地図が違う」と知っておけばリスクは減る。頭の中の”地図”は一人一人全員違うが、VAK理論やMBTIなどのタイプを知っておくと推測する時の助けにはなる。これらのお役立ちスキルは後述する。

注意3.自分が望んでいることを明確にしておく。

 コミュニケーションは手段であり目的ではない。目的を明確にしておくと「やり方」の選択肢は広がる。例えば「猫と仲良くなりたい」のが目的であれば、態度や話し方や言葉選びに気を使うよりもチャオチュールを買った方がうまくいく。「コミュニケーションを取ることで自分は何を実現したいのか?」を念頭に置いておくと、人間関係の悩みは減らすことができる。

 上記を踏まえて、下記の心理学のスキルを使うと、コミュニケーションを円滑に進めやすくなる。

① ミラーイングとバックトラッキング

 大昔にライオンやクマに囲まれて生活していた時代の名残で、人間は未知のものに対して警戒心を抱くようにできている。警戒された状態では話を聞いてもらうのは簡単ではない。一緒に仕事やスポーツをして相手のことがわかってくると警戒心は薄れるが、ミラーイングやバックトラッキングを使うと時短できる。ミラーイングは相手の動作を真似ること。相手が立っていたら自分も立つ。相手が座っていたら自分も座る。相手と目の高さを合わせる。バックトラッキング(オウム返し)は相手の言葉を繰り返すこと(例.「昨日猫がいた」と相手がいったら「猫がいたんですね」と言う)。相手と動作や言葉を合わせることで「自分と同じ」と思ってもらうと警戒心は薄まる。ただし、慣れていないとスキルを使うことに気を取られて相手の話を聞き漏らしたり態度が不自然になって警戒されたりするので、事前に練習しておく必要はある。

②VAK理論

 「右利き・左利き」のように、感覚にも「利き感覚」がある。V:視覚優位A:聴覚優位K:身体感覚優位それぞれの「利き感覚」で好きな言葉や表現方法が違う。

V:視覚優位
 「話が見えない」「全体像を示して欲しい」と言われたらVタイプに合わない伝え方をしている可能性あり。図や表を作って「見える化」すると伝わりやすい。明るい・暗い、大きさ・サイズ、色合い・景色など『視覚情報』を最初に持っていく。

A:聴覚優位
 「わからない」「どういう流れ?」と言われたらAタイプに合わない伝え方をしている可能性あり。また、Aタイプは目を閉じて話を聞くことがあるが、聞いていないのではなく真剣に聞いている(聴覚に集中している)ので誤解のないように。理論・根拠・筋道を示すと伝わりやすい。また、権威付けも効果的で「○○社長がおっしゃっていたように、・・・」のような頭文をつけるのも有効。

K:身体感覚優位
 「しっくりこない」「ぴんとこない」「腑に落ちない」 と言われたらKタイプに合わない伝え方をしている可能性あり。 「グッときてます」「結構いい感じです」などの感覚を伝えると伝わりやすい。また、”実物”を持って行くと飛びついてくる。(注:”実物”を見て触りたくてウズウズしている時は話を聞いていないので、触ってもらってから説明する)

 「話が通じない・・・」という場合は”利き感覚”が違う可能性がある。そういう時はVAKに合わせて伝え方を変えると意外なほどすんなり伝わることがある。自分の利き感覚と違う感覚で伝えようとするのは骨が折れるが、左手でもお箸を使えるようになるのと同じで練習したら上達はする。

③MBTI

 MBTIは「利き思考」。例えば「結論は結論」(決めたことは変えない)という思考タイプの人と「結論は暫定」(他に良さそうなモノがあれば決めたことは変えてもいい)という思考タイプの人が世の中にはいる。同じタイプの人では話はスムーズに進むが、違うタイプの場合はフラストレーションが溜まる可能性がある。

①「結論は結論」タイプ同士の会話
「お昼ご飯、カレーにしよう」「わかった」

② 「結論は暫定」タイプ同士の会話
「お昼ご飯、カレーにしよう」「わかった」「あ、やっぱりパスタがいい」「いいねー」

③ 「結論は結論」タイプ と「結論は暫定」タイプの会話
「お昼ご飯、カレーにしよう」「わかった」「あ、やっぱりパスタがいい」「何で?!」

③のような会話は、あらゆる場面で起こり得る。「利き思考」を知らないと相手のことを理解できないが、知っていると何が起きているのかが理解できる。

 MBTIでは「利き思考」を16タイプにわけている。全部を理解していなくても「利き思考」があると知っておくだけでもミスコミュニケーションは防ぎやすくなる。

(注:厳密に言うとMBTIはNLPには含まれない別モノだが、「地図の違い」を理解するスキルとして併記した)

 それぞれの「利き感覚」「利き思考」によっても好きな言葉や表現方法は違う。相手の「利き感覚」「利き思考」に合わせた伝え方をすると、伝えたいことを伝えやすくなる。

■「自分が伝えたいこと」を正確に伝えられたからといって、相手が自分の望むように動いてくれるとは限らない。

 相手がどう動くかは相手が決める。自分が伝えたいことをうまく伝えることができたとしても「言いたいことはわかったけど、やらない」と言われる可能性はある。そういう時は「コミュニケーションを取ることで、自分はどういう目的を実現しようとしていたのか」に戻る。「手段」に囚われているとドツボに嵌る可能性がある。「目的」に意識を向けると「手段」の選択肢は広がる(「Aさんに○○させる」よりも「○○してくれる人を探す」方が簡単で成功率も高い、となるかもしれない)。コミュニケーションに悩んだら「NLPの使い方1:自分に対して使う」に戻って「自分が望んでいること」に意識を向けると解決の糸口は見つかりやすくなる。

NLPが使えない理由

「相手をコントロールするために使う」とNLPは使えない。

 幸せで満ち足りていたら「相手をコントロール」する必要はない。人間は恐怖心を感じている時に相手をコントロールしようとする。しかし、相手をコントロールするのはなかなかうまくいかないし、相手をコントロールできたところで恐怖心はなくならない。「ではどうしたらいいか?」というと、自分の中にある恐怖心をケアする。

 人間は未知のモノに対して恐怖心を抱く。そして、自分の頭の中も“ブラックボックス”であり恐怖心の元となり得る。しかし、やり方を知っていたら自分の頭の中は明確にできる。

出来事→意味付け→感情→行動

 身の回りで起きた出来事に対し、人間は過去の経験に基づいて「意味付け」をする。その「意味付け」によって感情が生じ、感情によってどういう「行動」をするのかが決まる。この仕組みを理解し、「意味付け」を変えることで感情や行動を変えられるようになれば、自分の中の恐怖心はなくなる。一連の作業はNLP(神経言語プログラミング)のスキルを使うとより簡単に実行できる。

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「望んでいること」「現状」「やり方」の3つが明確になると、不安は小さくなる。
 そして、「質問に答える」だけで「望んでいること」「現状」「やり方」の3つは明確にできます。
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